「今は自分で預金や年金を管理し、身の回りのことも問題なくこなしているけれど、もし認知症になったらお金の管理や介護施設への入所手続きは誰がしてくれるのだろうか…。」一人暮らしをされている方や、頼れる親族が身近にいない方から、そのような不安をお聞きする機会が増えています。
身寄りのない高齢者や、家族と離れて暮らす高齢者が増えているという話題を耳にすることも多くなりました。私は日頃から地域の社会福祉協議会や地域包括支援センターを訪ねて地域の状況を見ていますが、少子高齢化社会への対応に迫られていることを強く感じています。
こうした中で、将来への備えの一つとして知っておいていただきたいのが任意後見制度です。任意後見契約は、判断能力が十分にあるうちに、将来サポートをお願いしたい人と、お願いしたい内容をあらかじめ契約で決めておくものです。

私は行政書士として、遺言や相続とあわせて成年後見に関するご相談をお受けしているのですが、このコラムでは、今から任意後見制度にどのように備えておけばよいのかについて、お伝えしたいと思います。
高齢化が進むにつれて、相続と同じように、判断能力が低下した後の生活や財産管理も、多くの方にとって身近な問題になりつつあります。ご自身やご家族のこととして、少し先の将来を思い浮かべながら読み進めていただければと思います。
一人暮らしの方や遠方に住む子ども世代にも関わる問題
任意後見制度の備えが関わってくるのは、高齢の方ご本人だけではありません。私がご相談を受ける中で、特に考えておいていただきたいと感じているのは、次のような方々です。
まず、一人暮らしの高齢者の方です。将来認知症になることに不安があり、預金や年金の管理を今はご自身で行っているものの、子どもが遠方に住んでいたり、身寄りが少なかったりして、いざというときに頼める人が近くにいないという方が当てはまります。
次に、遠方に住む子ども世代の方です。たとえば親が仙台で暮らし、子どもは東京や関東に住んでいるというご家族では、親の通帳や不動産の管理が気がかりで、認知症になった場合の対応を事前に決めておきたいと考える方もいらっしゃいます。介護施設に入所する際の契約手続きを、離れた場所からどのように進めればよいのかという不安を抱えている方も少なくありません。

さらに、配偶者がいない、いわゆるおひとりさまの方です。独身の方、離婚された方、配偶者と死別された方など事情はさまざまですが、頼れる親族が少ないという点では共通しており、将来の財産管理や手続きを誰に任せるのかを、ご自身で考えておく必要があります。
いずれの場合も、今すぐ困っているわけではないため、つい後回しになりやすいという点では共通しています。ご自身やご家族がどれかに当てはまると感じた方は、この機会に将来のことを一度考えてみてください。
認知症になってから考えようでは遅い場合がある
任意後見について私がまずお伝えしたいのは、認知症になったら考えればよいと先送りにしていると、間に合わない場合があるということです。任意後見契約は、判断能力が十分にあるうちに結んでおく必要があり、判断能力が低下してからでは、ご本人の意思で契約を結ぶことが難しくなってしまいます。
認知症になった後に支援が必要になった場合には、法定後見制度を利用することになりますが、その場合、後見人は家庭裁判所が選任します。ご本人が以前から信頼していた人にお願いしたいと思っていても、その希望がそのまま反映されるとは限りません。
また、ご家族の側でも、判断能力が低下した後になって、銀行の手続きはどうするのか、施設への入所契約は誰がするのか、自宅を売却できるのかといったことで悩まれることがあります。

とりわけ子どもが遠方に住んでいる場合は、こうした問題に気づくのが遅れたり、すぐに対応できなかったりすることもあるでしょう。元気なうちであれば選べた方法が、時間がたつにつれて選べなくなっていくという点が、この問題で最も注意しておきたいところです。
一人暮らしの方やおひとりさまの場合は、身近に異変に気づいてくれる人がいないこともあり、ご本人が気づかないうちに判断能力の低下が進んでしまうことも考えられます。まだ大丈夫と思える今の時期こそ、準備を始めるのに適したタイミングといえます。
早めに任意後見契約を準備しておく三つのメリット
元気なうちに任意後見契約を準備しておくメリットとして、私は大きく三つあると考えています。
一つ目は、将来サポートしてもらう人を自分で選べることで、これが最大のメリットです。法定後見では家庭裁判所が後見人を選任するのに対し、任意後見契約では、信頼できる家族や親族などを、ご自身の意思で選ぶことができます。
二つ目は、財産管理をどのように任せたいかを、ご本人の希望に沿ってあらかじめ決めておけることです。元気なうちに契約内容を考えておけば、預貯金の管理や公共料金の支払い、介護施設への入所手続き、不動産の管理などについて、何をどこまでお願いするのかを、ご自身の考えをもとに整理しておくことができます。
三つ目は、家族の負担を軽くできることです。事前に任意後見契約を結んでおけば、誰が何を担うのかという役割が明確になり、銀行や施設の手続きの場面で家族が迷う場面を減らすことにつながります。役割があらかじめ決まっていることは、家族間のトラブルを予防するうえでも意味があると私は考えています。

三つのメリットはいずれも、ご本人が元気で、自分の考えを伝えられるうちに準備を始めてこそ得られるものです。一人暮らしの方やおひとりさまにとっては、将来を誰に託すのかをご自身で決めておけることが安心材料になり、遠方に住む子ども世代にとっては、親の希望を事前に知り、自分が何を担うのかを把握しておけることが、いざというときの落ち着いた対応につながります。
今すぐできる財産の書き出しと、家族との話し合い
任意後見契約を結ぶかどうかを決める前でも、今日から始められる準備があります。私がおすすめしているのは、次の二つです。
一つは、財産や契約の状況を書き出すことです。預貯金口座、不動産、保険、年金、借入金、クレジットカード、携帯電話の契約などを一覧にしておくだけでも、将来への大きな備えになります。ご自身にとっても現在の状況を把握するきっかけになりますし、いざというときに支援をお願いする人にとっても、何をどう管理すればよいのかがわかりやすくなります。
もう一つは、家族と話し合っておくことです。認知症になった後、誰に財産管理を任せたいのか、介護施設への入所を希望するのか、自宅をどうするのかについて、元気なうちに家族と考えを伝え合っておきましょう。特に遠方に住む子どもがいる場合は、早めに情報を共有しておくことが重要です。

書き出した内容や話し合いの結果をもとに、どのような契約が必要なのかを考えていく段階では、私もお手伝いができます。ご希望があればご自宅に伺う出張相談も行っており、暮らしぶりを把握しながら落ち着いた環境でお話を伺うよう心がけています。
私は行政書士になる前、ハウスメーカーの営業担当として長く住まいづくりに携わり、施主ご本人だけでなくご家族それぞれの意向を伺いながら調整してきました。その経験を生かし、ご本人とご家族の双方のお考えを丁寧にお聞きすることを大切にしています。
電話やメール、ビデオ通話でのご相談も可能ですので、遠方に住むお子様が一緒に話を聞きたいという場合も、都合のよい方法を選んでいただけます。ご相談の内容によっては、弁護士や司法書士といったほかの専門家にお任せしたほうが適切な場合もあるため、状況に応じてご案内いたします。
まとめ
任意後見契約は判断能力が十分にあるうちにしか結ぶことができないため、元気な今のうちに財産の状況を整理し、家族と話し合いながら将来の備えを考えておくことが大切だと私は考えています。
こんな方はご相談ください
・一人暮らしで、将来認知症になったときの預金や年金の管理に不安がある方
・親が仙台、自分は東京や関東などに住んでいて、親の通帳や不動産の管理、介護施設入所時の手続きが心配な方
・独身の方や配偶者と離別・死別された方で、頼れる親族が少なく、将来の手続きを誰に任せるか考えておきたい方
お問い合わせはこちら:https://masarukanno.com/contact/

