業務内容・料金表を見る。

「もし認知症になったら…」一人暮らしの方が今からできる任意後見契約という備え

任意後見契約

一人暮らしで認知症になった後のことが心配というご相談

「今は元気に暮らしているけれど、もし認知症になったら、預金の管理や介護施設への入所手続きを誰がしてくれるのだろうか…」。一人暮らしをされている方から、こうした将来への不安をお聞きすることがあります。

以前ご相談に来られた70代の方も、その心配を抱えていらっしゃいました。現在はご自身で身の回りのことをこなし、日々の生活に困っているわけではないものの、将来認知症になったときに、お金の管理や施設に入る際の手続きを任せられる人がいないのではないかと気がかりだったそうです。

お話を伺うと、お子様は県外にお住まいで、何かあったときにすぐ対応してもらうのは難しい状況でした。家族がいても離れて暮らしていれば、日常的な手続きや急な用事まで頼むのは簡単ではありません。ご本人もそのことを感じていたため、まだ元気なうちに一度相談しておこうと考えられたのだと思います。

私は行政書士として、遺言や相続とあわせて、成年後見に関するご相談をお受けしています。このコラムでは、こうした将来への備えのご相談を私がどのような流れで進め、どこに一番時間をかけているのかをお伝えします。

財産と希望を整理し三つの時期ごとに必要な手続きを考える

ご相談を受けて、私が最初に行ったのは、現在の財産の状況と、これからどのような生活を送りたいかというご希望を整理することでした。預金や自宅といった財産がどのような状況にあるのか、介護が必要になったときにはどのような暮らしを望んでいるのかを一つずつ伺い、ご本人と一緒に確認していきました。

そのうえで、任意後見制度の仕組みをご説明しました。任意後見は、判断能力が十分にあるうちに、将来支援をお願いしたい相手と、お願いしたい内容をあらかじめ契約で決めておく制度です。誰に支援を頼み、財産をどのように管理してほしいのかを、ご本人の意思で選んでおけるところに大きな特徴があります。

あわせて、元気なうち、判断能力が低下してきたとき、亡くなった後という三つの時期に分けて、それぞれに必要となる手続きを整理しました。時期によって考えておくべきことは異なりますので、任意後見契約だけでなく、必要に応じて財産管理等委任契約や見守り契約、遺言書なども含めて検討していきます。

ご本人が心配されていた預金の管理や介護施設への入所手続きは、判断能力が低下してきたときに必要となる手続きにあたりますが、その前後の時期についても考えておくことで、将来への備え全体の見通しが立てやすくなります。

なおこの方の場合も、任意後見契約を軸にしながら、ほかの契約や遺言書を組み合わせる必要があるかどうかを、ご本人のお考えを確かめつつ検討を進めています。将来への備えは、認知症になってからでは選択できる方法が限られてしまうことがあるため、自分の意思をしっかり伝えられる今の時期に考え始められたことには、大きな意味があると感じています。

最初のご相談とヒアリングに最も時間をかける

私が任意後見のご相談で一番重視しているのは、ご本人のお考えや将来への希望を丁寧にお聞きすることです。任意後見契約は、書類を作成すれば済むというものではなく、将来どのような生活を送りたいのか、誰に支援をお願いしたいのか、財産をどのように管理してほしいのかといったことを一つひとつ確認しながら、必要となる支援を整理していく必要があります。

そのため当事務所では、最初のご相談とヒアリングに特に時間をかけています。現在の生活状況やご家族との関係、財産の状況、将来の介護や生活に対する希望などを丁寧に伺ったうえで、任意後見契約だけにとらわれず、見守り契約や財産管理等委任契約、遺言書なども含めて、将来への備えをご本人と一緒に考えていきます。

私は行政書士になる前、ハウスメーカーの営業担当として長く住まいづくりに携わってきました。住宅展示場に来ていただくだけでは表面的なやり取りにとどまり、お客さまの本当の希望が見えないことも少なくなかったのですが、行政書士の仕事も同じで、相談者の方がどのような生活をしていて、悩みの背景に何があるのかを理解することが大切だと考えています。

ご希望があればご自宅に伺う出張相談も行っており、暮らしぶりを把握しながら、リラックスした環境で本音をお聞きできるよう努めています。

制度にご本人を合わせるのではなく、ご本人が希望する将来の生活に合わせて、必要な制度や契約を考える。この考え方を、当事務所では何より大切にしています。

ご本人の希望と契約内容にズレがないよう確かめながら進める

任意後見契約は、将来ご本人の判断能力が低下したときの生活や財産管理に関わる大切な契約です。そのため、最初のご相談だけで判断することはせず、ご本人の希望と契約内容との間にズレが生じていないかを、一つひとつ確認しながら進めています。

確認の際には、任意後見契約だけを切り離して考えるのではなく、見守り契約や財産管理等委任契約、遺言書との関係も整理し、今から将来までどのような備えが必要なのかという視点で全体を見直します。元気なうちから亡くなった後までを一続きのものとして見ていくと、ある時期の備えが抜け落ちていないかにも気づきやすくなります。

契約内容についても、ご本人が十分に理解し納得できるよう、わかりやすい言葉で説明し、認識の違いや漏れがないかを確かめながら進めます。行政書士をしていると先生と呼ばれることもありますが、気になることを遠慮なく口にしていただけるよう、かしこまらずに話せる親しみやすい雰囲気を心がけています。

ご相談の方法も、事務所での面談や出張相談のほか、電話やメール、ビデオ通話など、ご本人の都合のよいものを選んでいただけます。

書類を作ることを目的とするのではなく、ご本人が希望する将来をできる限り具体的にして、それを適切な契約内容につなげていくことが、任意後見に関する業務の品質を保つうえで欠かせないと考えています。

なお、ご相談の内容によっては、弁護士や司法書士といったほかの専門家にお任せしたほうが適切な場合もあるため、状況に応じてご案内しています。

元気で意思を伝えられる今のうちに備えておく意味

私がここまでヒアリングと確認にこだわるのは、任意後見契約がその方の将来の生活を支える大切な契約だからです。任意後見について相談される方の不安や希望は一人ひとり異なり、家族構成や財産の状況、介護への考え方、これからどのように暮らしていきたいのかによって、必要な備えも変わってきます。

最初からこの制度を使いましょうと決めてしまうのではなく、まずはご本人のお話をじっくり伺い、何に不安を感じているのか、将来どのような生活を望んでいるのかを整理することから始めるのは、そのためです。

将来、ご自身の判断能力が低下したときになって初めてご本人の希望を確認しようとしても、十分に意思を伝えられない可能性がありますので、元気でご自身の意思を伝えられる今のうちに、将来への希望を丁寧に確認し、それを形にしておくことに意味があると私は考えています。

まだ元気だから必要ないと先送りにするのではなく、元気な今の時期に将来について考えておくことが大切です。私自身、行政書士になって間もない頃に父を亡くしましたが、事前に遺言書を書いてもらっていたため、兄弟の間で遺産をめぐって争うような事態にはなりませんでした。元気なうちに意思を形にしておくことの大切さは、この経験からも実感しています。

日頃から地域の社会福祉協議会や地域包括支援センターを訪ねて地域の状況を見ていると、少子高齢化社会への対応に迫られていることを強く感じます。契約書を作って終わりにするのではなく、この方がこれから安心して生活していくためにはどのような備えが必要なのかを、これからもご本人と一緒に考えていきたいと思っています。

まとめ

任意後見契約は、元気で意思を伝えられるうちに希望する将来の生活を形にしておくための契約であり、制度に合わせるのではなく、ご本人の希望から必要な備えを考えていくことが大切だと私は考えています。

こんな方はご相談ください

・一人暮らしで、認知症になった後の預金の管理や介護施設への入所手続きが心配な方

・お子様が県外など離れた場所に住んでいて、将来の手続きをすぐに頼むのが難しい方

・任意後見契約のほか、見守り契約や財産管理等委任契約、遺言書など、どのような備えが必要か整理したい方