「父が亡くなったのですが、まず何から始めればいいのでしょうか?」
名取市の事務所で相続のご相談をお受けしていると、本当によくいただくのがこの質問です。葬儀が終わってほっとする間もなく、銀行のこと、役所のこと、実家の名義のことが一度に押し寄せてきて、どこから手を付ければよいのか分からなくなってしまう。そのお気持ちは、とてもよく分かります。

実は私自身も、行政書士になって間もない頃に父を亡くしました。だからこそ、相続は何から始めるべきかという問いには「順番」を大切にしてお答えしたいと思っています。このコラムでは、私が実際のご相談でお伝えしている最初の一歩を、順を追ってお話しします。
最初は「遺言書」と「相続人」の確認から
結論からお伝えすると、最初にしていただきたいのは、遺言書が残されていないかを確認すること、そして相続人が誰なのかを確認すること、この2つです。
私が遺言書を最初に挙げるのは、自分の父の相続で、遺言書に助けられた経験があるからでもあります。父が生前に遺言書を書いてくれていたおかげで、兄弟の間で遺産をめぐって争うような事態にならずに済みました。遺言書があるかどうかは、その後の進め方を考えるうえでの出発点になります。

もう一つの相続人の確認は、「うちは母と子どもたちだけだから」と思っていても省略できない作業です。ご家族が把握していない相続人がいることもありますし、連絡の取れない相続人がいるケースもあります。相続人が確定しないまま遺産の分け方を話し合っても、その話し合いを前提に先に進めることができないかもしれません。
ですから私は、ご相談の最初の段階で、遺言書の有無と家族関係の2点を最初に伺うようにしています。ここが固まると、その先に何を調べればよいかが自然と見えてきます。
預金の解約より先に「全体」を把握したい理由
お父様が亡くなると、まずは口座の手続きや不動産の名義変更を済ませてしまいたい、と思われるかもしれませんね。けれども私は、「まず預金を解約しましょう」ではなく、「まず相続関係と財産・負債の全体を把握しましょう」とお答えしています。そのほうが、ご家族にとって安全だと考えているからです。
「父が亡くなりました」と伺ったとき、私が頭の中で確認していく順番があります。
① 亡くなった日と、亡くなったことを知った日
② 遺言書の有無
③ 家族関係(誰が相続人になるのか)
④ 借金を含む財産の状況
⑤ 相続放棄を検討する可能性があるか
⑥ そのうえで、戸籍調査・財産調査へ
最初に「亡くなったことを知った日」を伺うのは、後でお話しする相続放棄などの期限が、この日を基準に動き出すためです。手続きの順番を誤らないために、私はいつもこの流れで状況を整理しています。

この考え方は、ハウスメーカーで31年間、注文住宅の営業として170棟の住まいづくりに携わった経験ともつながっています。家づくりでは、施主様ご本人だけでなくご家族それぞれのお考えを伺い、全体を見渡しながら調整していくことが欠かせませんでした。相続も同じで、一部の手続きだけを先に進めるより、まず全体像をご家族と共有することを、まさる行政書士事務所では大切にしています。
相続人は戸籍で、財産は負債まで確認する
「戸籍を集める」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれませんね。相続人を確認するためには、お父様の戸籍をさかのぼって集め、どなたが相続人になるのかを一つずつ確かめていきます。
相続関係説明図とは、戸籍謄本などをもとに、亡くなった方と相続人との関係を図に整理したもののことです。これを作成することで、相続人の範囲をはっきりさせることができます。本籍地が遠方にあって役所を回るのが難しい場合なども、当事務所で戸籍の収集から相続関係説明図の作成までお手伝いしています。
相続人が確定したら、次は財産の整理です。預貯金、不動産、自動車など、どのような財産があるのかを確認していきます。不動産は固定資産税の納税通知書をもとに登記簿を取り寄せて特定し、預貯金は金融機関名・預金の種類・口座番号で、自動車は車検証で特定していきます。

ここで私が特に大切にしているのが、プラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も確認することです。所在が分からない口座があれば遺品や郵便物から、分からない不動産があれば名寄帳から調べていくこともあります。財産目録とは、こうして確認した財産を一覧にまとめた書類のことで、その後の判断や話し合いの土台になります。
業務内容と料金の詳細は、こちらのページでご案内しています(https://masarukanno.com/work/)。
借金があるかもしれないなら「3か月」を意識
ご相談の中で「もしかしたら父に借金があったかもしれない」という言葉が出たとき、私はすぐに期限のことを意識します。相続では、財産を調べることと同じくらい、いつまでに判断しなければならないかが重要になるからです。
相続人には、単純承認・相続放棄・限定承認という選択肢があります。熟慮期間とは、相続人がこれらのどれを選ぶかを考えるための期間のことで、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」とされています。相続放棄をする場合は、この期間内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。

財産の状況を調べてもこの期間内に判断できない事情がある場合には、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てる制度もあります。
だからこそ、負債の有無が見えないうちに預金の解約や名義変更を先に進めることは、おすすめしていません。まず全体を把握し、相続放棄を検討する可能性があるかどうかを早めに見極めることが大切だと考えています。
なお、相続放棄の家庭裁判所への手続きや、相続人の間で争いになっている案件は、司法書士や弁護士の業務範囲になります。当事務所では戸籍や財産・負債の状況を整理したうえで、内容に応じて弁護士や司法書士といった専門家をご案内しています。「どこに頼めばいいのか分からない」という段階で、まず声をかけていただければと思います。
話し合いがまとまったら遺産分割協議書に
相続人と相続財産の全体が見えてくると、ようやく「どう分けるか」の話に進めます。必要に応じて相続人の皆さんで遺産の分け方を話し合い、合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。遺産分割協議書とは、相続人全員で合意した遺産の分け方を書面にしたもののことです。
当事務所では、遺産分割協議書の作成のほか、法定相続情報制度の代理申請や預金口座の解約といった遺産整理のお手伝いもしています。2020年10月の開業以来、2026年8月現在までに担当した相続業務は76件になりました。

ご相談は、事務所だけでなくご自宅への出張や、TeamsやZoomなどのオンラインでもお受けしています。ご自宅に伺うと、暮らしぶりや、お悩みの背景にあるご家族の事情が見えてくることが多いのです。住宅展示場での打ち合わせだけでは、お客様の本当の希望が見えないことがある。営業時代に学んだこの感覚を、今も大切にしています。
最初からすべてをご自身で調べる必要はありません。「まだ何も分からない」という段階でも大丈夫です。まず現在分かっているご家族の状況と財産についてお聞きし、何を調べ、どの手続きを、いつまでに行う必要があるのかを一緒に整理していきます。
相続で、何から始めればよいのか迷ったときは、遺言書、相続人、財産と負債という順番で全体を見渡すことから始めてみてください。宮城県名取市のまさる行政書士事務所では、戸籍の収集から財産の整理、遺産分割協議書の作成まで、ご家族の状況に合わせてお手伝いしています。
まとめ
相続は、慌てて手続きを進めるより、まず立ち止まって全体を整理することから始まります。遺言書、相続人、財産と負債を順番に確かめることが、ご家族みんなが納得できる相続への近道だと私は考えています。
・父や母が亡くなり、何から手を付ければよいか分からない方
・借金があるかもしれず、相続放棄の期限が気になっている方
・相続人が誰なのか分からない、連絡の取れない相続人がいる方
・財産の内容が分からず、どう調べればよいか迷っている方
ご相談・お問い合わせはこちらから:https://masarukanno.com/contact/


