こんにちは、「遺言書作成・相続手続きサポート」宮城県名取市まさる行政書士事務所 菅野勝(かんのまさる)です。
今回は、【遺言書の書き方講座 財産編 vol.8】として、『「株・投資信託をお持ちの方」のための遺言書の書き方』についてお伝えしたいと思います。
遺言書を作成する皆様共通のメリット・理由は、相続開始時に面倒な遺産分割協議書が不要となり、相続手続きを円滑に進められることです。
遺言作成時に知っておきたいチェックポイントを解説します。
「株・投資信託をお持ちの方」のための遺言書の書き方
今回のチェックポイント
- 自身の経営する会社の株式をお持ちの方
- 上場会社「株式」の取扱い
- 振替株式の特定
- 後の変動に備える
- 相続人名義の口座開設
- 投資信託受益権について
- 投資信託受益権の特定
自身の経営する会社の株式をお持ちの方
ご自身で株式会社を経営し、当該株式会社の株式を所有している場合において、当該株式を特定の相続人(後継者等)に相続させたい場合、遺言で当該株式を相続させることになります。
特定の方法は対象となる株式会社(商号、本店所在地)、株式の種類、株数を記載します。
自社株を事業承継者である相続人へ引き継ぐ際の注意点は、こちらをご覧ください。
▼▼▼▼
上場会社「株式」の取扱い
株式の電子化に伴い、振替制度が利用されるようになりました。
株式等振替制度とは、債権、株式等の振替に関する法律により、上場会社の株式等に係る株券等を全て廃止し、株券等の存在を前提としておこなわれてきた株主等の権利に管理を、証券会社等に開設された口座において電子的に行うことです。
そして、株式の移転は振替口座簿の記録又は記載により行われることになります。
振替株式の特定
振替株式については、口座開設者(預託をしている証券会社及び支店)、加入者(口座名義人)、口座番号、預託をしている株式の銘柄、銘柄コード、預託している株式数等によって特定することになります。
なお、単元未満株も振替制度を利用できますので、遺言で取扱いは、単元株式と同様になります。
条項例
第○条 遺言者は、遺言者の所有する次の株式を、妻A(昭和○年○月○日生)に相続させる。 口座開設者 ○○証券株式会社 ○○支店 加入者 ○○ 口座番号 ○○ 銘柄 ○○ 銘柄コード ○○ 数量 ○○株
後の変動に備える
株式については、遺言後に株式分割や有償取得で変動することがあります。
株式についての遺言内容の意思に従い、適切な対応がされるように条項を作成する必要があります。
相続人名義の口座開設
株式が証券会社の口座で管理をされている場合は、遺言によって、遺言者(被相続人)の口座から相続人の口座へ株式を移転することになります。
被相続人名義のままでは処分等をすることができません。
そのため、遺言者が株式を有いしている証券会社に相続人が口座を有いしていない場合は、相続人名義で新たに口座を開設する必要があります。
投資信託受益権について
投資信託とは、多数の投資家から集めた資金を専門的運用経験をもつ管理者が証券を中心に分散投資することにより、その利益を投資家に分配する制度です。
安全かつ有利な利益の分配をうけようとする投資対象でありますが、投資した元金の保証はありません。
投資信託受益権の特定
投資信託受益権は、口座開設者(証券会社名、支店)、加入者(口座名義人)、口座番号、名称、委託者、受託者、銘柄コードで特定します。
条項例
第○条 遺言者は、遺言者の所有する次の受益権を、妻A(昭和○年○月○日生)に相談させる。 口座開設者 ○○証券株式会社 ○○支店 加入者 ○○ 口座番号 ○○ 名称 ○○MRF 委託者 ○○株式会社 受託者 ○○信託銀行株式会社 銘柄コード ○○
今回は、以上となります。
*参考文献 「遺言書作成・聴取事項のチェックポイント」伊庭 潔著